北九州市八幡東区にそびえ立つ東田第一高炉史跡。
その巨大な姿は、日本の近代化を支えた鉄鋼業の隆盛を今に伝えるシンボルです。
今回は、東田第一高炉史跡の魅力と見どころを、歴史や構造、見学方法、周辺情報などを交えて詳しくご紹介します。
東田第一高炉:日本の近代化を支えた鉄の巨人
明治維新後、「富国強兵、殖産興業」をスローガンに掲げた日本にとって、鉄鋼業の確立は急務でした。
鉄は産業革命の原動力であり、近代国家の建設には欠かせない存在だったのです。
当時、西洋諸国では鉄の生産が盛んに行われており、その技術革新は目覚ましいものがありました。
中世ヨーロッパでは、鉄生産の発展とともに、8世紀頃には農作業で使う馬の「ひずめ」に蹄鉄をつけるようになり、鉄つくりが工業として発展していきました。
日本においても、鉄は武器や農具、建築材料など、様々な用途に用いられてきましたが、その生産量は限られていました。
そのため、日本は近代化を進める上で、鉄鋼業の確立が不可欠であると認識し、西洋の技術を導入することで、鉄鋼生産の拡大を目指したのです。
日清戦争を契機に近代洋式製鉄所設立の機運が高まり、明治30年(1897年)、八幡村に官営製鐵所が開庁。
ドイツから技術者を招き、最新鋭の設備を導入することで、世界水準の製鉄所を建設しました。
そして、明治34年(1901年)、東田第一高炉に火が灯り、日本の近代製鉄の歴史が始まりました。
当時の東田第一高炉は、高さ30m、容積493.9㎥、公称能力160トンで、建設にはドイツの技術が導入されました。
その後、幾度かの改修を経て、昭和37年(1962年)に完成した第10次改修高炉は、日本初の高圧高炉となり、初期の能力の5倍以上もの生産能力を有していました。
この高炉は、今日の超高圧高炉時代の先鞭をつけた高炉として、日本の鉄鋼生産を牽引したのです。
昭和47年(1972年)にその役目を終えるまで、東田第一高炉は日本の産業発展に大きく貢献しました。
第一次世界大戦勃発に伴う鉄鋼需要の増大を受け、官営製鉄所は第三期拡張工事などを実施し、年間生産量75万トンを目指しました。
こうして国内需要の大半をまかなうまでに成長した官営製鉄ですが、民営製鉄所の台頭や昭和恐慌を背景に、製鉄合同論が高まりました。
そして、1934年、官民合同の日本製鉄株式会社が設立されるに至ったのです。
東田第一高炉は、世界で唯一、高炉設備一式が完全な形で保存されている貴重な史跡です。
日本の近代化を支えた鉄鋼業のシンボルとして、そして、時代の変遷を物語る貴重な産業遺産として、現在もその雄姿を留めています。
東田第一高炉の構造と製鉄プロセス
高炉は、鉄鉱石を溶かし、銑鉄を生産する施設です。
東田第一高炉は、炉本体、熱風炉、煙突などから構成されています。
製鉄プロセス
- 原料投入: 鉄鉱石、コークス、石灰石などの原料を高炉上部から投入。
- 熱風吹き込み: 熱風炉で1000℃以上に加熱した高温の空気を、高炉下部から吹き込み。
- 還元: 高温の空気によりコークスが燃焼し、一酸化炭素が発生。この一酸化炭素が鉄鉱石を還元し、鉄を生成。
- 溶解: 還元された鉄は、高温で溶けて炉の底部に溜まる。
- 出銑: 溶けた銑鉄を出銑口から取り出す。
- スラグ排出: 銑鉄に含まれる不純物は、スラグとして分離され、出滓口から排出。
こうして生産された銑鉄は、さらに転炉で処理され、鋼鉄へと精錬されます。
東田ミュージアムパーク
東田第一高炉史跡を含む一帯は、東田ミュージアムパークとして整備されています。
「いのちのたび博物館」、「スペースLABO」、「タカミヤ環境ミュージアム」、「北九州市立美術館」など、様々な博物館・美術館が集まっています。
東田第一高炉と合わせてこれらの施設を訪れることで、一日中楽しむことができます。
東田第一高炉史跡のアクセス情報
東田第一高炉史跡 基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
住所 | 〒805-0019 福岡県北九州市八幡東区東田2丁目 |
電話番号 | 093-663-6300 (北九州市産業経済局産業観光課) |
アクセス | JR鹿児島本線「スペースワールド駅」下車 徒歩約5分<br>西鉄バス「いのちのたび博物館前」下車 徒歩約5分 |
営業時間 | 9:00~17:00 (史跡広場は常時見学可能) |
休館日 | 年末年始 (12月29日~1月3日) |
入場料 | 無料 |
駐車場 | あり (有料) |
東田第一高炉史跡に関する Q&A
Q. 東田第一高炉はなぜ保存されたのですか?
A. 老朽化により解体の危機に瀕していましたが、市民運動により保存が決定しました。日本の近代化を支えた貴重な産業遺産として、後世に伝えるために保存されています。
Q. 高炉内部の見学はできますか?
A. 現在、広場への立ち入りが禁止されているため、高炉内部の見学はできません。
まとめ
東田第一高炉史跡は、日本の近代化を支えた鉄鋼業の歴史を伝える貴重な産業遺産です。
その巨大な姿は、見る者に圧倒的な迫力を与えます。
高炉の構造や製鉄の工程を学ぶことができるだけでなく、当時の製鉄所の活気や、そこで働く人々の様子を想像することができます。
周辺には、博物館や美術館などの文化施設も充実しており、一日かけて楽しむことができます。
ぜひ、足を運んで、日本の産業史に触れてみてください。