長府の秋を彩る、赤と黄色のトンネル。

城下町・長府の少し奥まった高台に、知る人ぞ知る紅葉の名所「覚苑寺(かくおんじ)」があります。

ここは単なるお寺ではありません。日本最古の貨幣**「和同開珎(わどうかいちん)」**が造られた場所であり、明治の偉人たちが静かに眠る場所でもあります。

黄檗宗(おうばくしゅう)という中国風の独特な雰囲気を持つ境内で、歴史と絶景に浸る散策はいかがさてしょうか。


1. 息をのむ美しさ!紅葉の「参道階段」

覚苑寺を訪れる多くの人々のお目当ては、秋の景色です。

  • 紅葉のトンネル:山門へと続く長い石段の両脇には、たくさんの楓(カエデ)が植えられています。11月下旬から12月上旬にかけて、これらが一斉に色づき、頭上を赤やオレンジで覆い尽くします。
  • 散り紅葉:ピークを過ぎた頃には、石段が落ち葉で埋め尽くされ、まるで赤い絨毯を敷いたような幻想的な光景が広がります。

2. ここでお金が造られた!「和同開珎」のふるさと

覚苑寺のあるこの場所は、歴史的に非常に重要なスポットでもあります。

奈良時代、この付近一帯には**「長門国鋳銭所(ながとのくにじゅせんしょ)」**が置かれていました。

  • 和同開珎:教科書にも出てくる日本最古の流通貨幣「和同開珎」などが、かつてこの地で鋳造されていました。現在は国の史跡に指定されており、出土した遺物(重要文化財)は近くの長府博物館に展示されています。
  • 和同焼:境内には、この歴史にちなんだ「和同焼」の窯元もあり、焼き物文化の一端に触れることができます。

3. 明治の巨人たちと、中国風の建築

元禄11年(1698年)、長府藩主・毛利綱元によって創建されたこのお寺は、中国・福建省の高僧を招いて開かれました。そのため、日本の一般的なお寺とは少し違う、異国情緒ある雰囲気が漂っています。

  • 乃木希典と狩野芳崖:境内には、長府ゆかりの二人の偉人、明治の武人・**乃木希典(のぎ まれすけ)**と、近代日本画の父・**狩野芳崖(かのう ほうがい)**の像が置かれています。長府が「文教の地」として栄えた証です。
  • 勝山御殿の遺構:お寺の庫裏(くり=台所や住居部分)は、幕末に藩主が暮らした「勝山御殿」の一部を明治6年に移築したもの。貴重な建築遺構を間近に見ることができます。

Editor’s Note: 徒歩15分の価値あり

最寄りのバス停「城下町長府」からは徒歩約15分と少し距離があり、緩やかな坂道も続きます。しかし、登りきった先にある静寂と紅葉の美しさは、その疲れを忘れさせてくれるはずです。歩きやすい靴で訪れましょう。


基本情報 (Access & Info)

項目詳細
寺院名覚苑寺(かくおんじ)
住所山口県下関市長府安養寺3丁目
拝観境内自由
宗派黄檗宗(おうばくしゅう)
アクセスJR「下関駅」からバス約23分、「城下町長府」下車、徒歩約15分
駐車場あり(参拝者用)
お問い合わせ083-245-0649

よくある質問 (FAQ)

Q. 紅葉の見頃はいつですか?

例年、11月下旬から12月上旬にかけてが見頃です。長府庭園や功山寺の紅葉と時期が重なるため、長府エリア全体で紅葉狩りを楽しむことができます。

Q. 「和同開珎」のお金は見られますか?

覚苑寺の境内は「跡地」であり、実際に発掘された貨幣や道具(重要文化財)は、ここから車で5分ほどの場所にある**「下関市立歴史博物館(長府博物館)」**に寄託・展示されています。実物を見たい方は博物館へも足を運んでみてください。

Q. 坂道はきついですか?

バス停から住宅街を抜けていく道は緩やかな上り坂になっています。お寺の入り口には石段がありますので、足腰に不安がある方は、車(タクシー等)でお寺の近くまで上がることをおすすめします。


【まとめ】

鮮やかな紅葉の石段を登れば、そこは奈良時代の造幣所跡であり、江戸時代の学問の拠点。

覚苑寺は、いくつもの時代の空気が重なり合う不思議な場所です。

長府散策のちょっと奥まで足を延ばして、静かな秋の一日を過ごしてみませんか?

By kyushutv

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